「そろそろ帰るかい…」


返事のない晴香に憲吾は優しく言う…


「晴香、何も心配しないで俺にこれからも話して…いつでも力になるから。夫婦の問題に俺は口出しはできない。でも、悩みを話したりして晴香が楽になれるなら、いつでも連絡くれていいから…」


晴香にかけてあげられる精一杯の言葉だった。


本当は…


本心は…


どうしても耐えられなくなったら…


俺は晴香を…


でもそれを言えなかった。


愛しすぎると、本心が言えない。


言ってしまうことで、晴香との大切な関係を失ってしまうかもしれない。


愛しすぎると、本心を隠してしまう。


それは…


相手の幸せを心から願おうとするから…


そして…


自分の心が傷付くことを恐れているから?


傷つけたくないから…


色々な想いが心の中で交差していて、胸が痛む…