憲吾に視線を向ける…


一瞬、悲しそうな顔に見えたのは、気のせいではないと思った。


自分がもし逆の立場を想像したら、耐えられないと思う…


一緒に暮らしている人との会話なんて、聞きたくないのは間違いない。


「憲吾…ごめんね。電話取らなければ良かった」


「どうして晴香謝るの?謝らなければいけないのは俺のほうだよ。晴香に俺は気を使わせて…可哀想なことしてるし、御主人にだって…」


「言わないで…それ以上言わないで。憲吾は悪くないよ。私が家庭があるのに、憲吾を愛してしまった…悪いのは、あたし。全部あたしが悪いの」


涙が流れて…


憲吾に寄り添いたいのに、そうしなかったあたしの肩を、憲吾は何も言わずに抱き寄せてくれた…


あったかな憲吾の胸の中で、泣きじゃくりながらうずくまっていた、あたし…