世利を抱いて、追いかけようとした晴香を母が止めた。


「晴香…追いかけたらダメ。祐輝さんの気持ちわかってあげて…」


晴香はその場にしゃがみこんで泣いていた。


自分でも、何が悲しいのかもわからずに、でも涙は止まらなかった…


里美も春樹に寄りかかるように泣きながら、晴香と祐輝の最後の瞬間を見ている…


祐輝は今どんな気持ちでこの玄関を出たのだろう…もう二度と会わない…祐輝の性格なら、絶対に決めているはずだ。


どんなに晴香への愛情が本当は大きかったのか、どんなに晴香に自分の気持ちをわかってもらって謝りたかったのか…本当は一緒にいたかったか…里美も春樹も憲吾もわかっていた。


ただ、潔癖すぎる性格が、全てを決める気持ちになったのも確かだったし、世利の気持ちを考えすぎて、結果を急ぎすぎたのかもしれない…


でも、もう晴香が追いかけることは許されなかった。


晴香が最初に決心した離婚だったから…