「憲吾は、もう帰るのかい？美味しい物食べておいで～これ使いなさい」


父は自分の財布から、1万円を取り出して、晴香に渡した。


「いいよ…パパ」


「いいから…憲吾にもずいぶんと世話になった。晴香が元気になったのが、パパも嬉しいんだ～祐輝君の金は使うな…憲吾にも金を出させるなよ。これは、パパ、ママが晴香にあげたお金だ！自由に使いなさい…」


「ありがとう…パパ、ママ」


「憲吾と、楽しんでおいで～晴香の気持ちは、ママがパパに話しておくから～」


車の止まる音がして、呼び鈴が鳴ると、憲吾が入ってきた。


「晴香！指どうだった？」


「見て～憲吾！包帯取って、温めなかったら、このギブスだけでいいって～」


「良かった～」


玄関で盛り上がっていた二人に、母は笑いながら言う。


「憲吾～晴香連れ出してもいいけど…くれぐれも、晴香が困るようなことだけ…気をつけてね～」


「あっ…はい」


照れくさそうに、憲吾は笑った。