ただ、子供の頃から晴香を知っていて、甘えられる存在だったに違いない憲吾に再会して、素の自分に戻れた晴香が、自宅に帰って、作った笑顔で自分と接し、心を見せないで…自分の欲求を満たす行為にただ黙って応じ…


そして癒されていた。


あいつにだけ見せる、あどけなくも見えるあの表情…


それにだけは、自分は負けた…と本気で感じていた。


じゃあ、自分が晴香にしてあげて喜ばれていたことは?


普通の家庭


普通の生活


世利という命の誕生に関わることができた…


一番重要なことに関わってきていたはずなのに、一番大変なことを忘れていたんだな…


フフッ…


祐輝は、ため息のような笑いをもらした。


自分に足りなくて、憲吾にあったもの…


愛情を、全て表現できる気持ち…


ありのままの自分を、素直に見せて、感情を隠さない正直な心…


どれを取っても、自分に勝目はないな…


そう祐輝は苦笑している…