今は、そんな自分の気持ちをおさえるのが精一杯で、母親の嫌味な言葉を聞いて、あつくなるのが、嫌だった。


無言のまま、車を走らす祐輝に、母親は後部座席でため息ばかりついて…いつの間にか、眠っている。


静かで一番いいや…


片道、2時間の道のりを、祐輝は音もない車の中でただ、ひたすら実家に向かって運転していた。


頭の中で考えていたこと…


晴香のこと…


世利のこと…


そして…


憲吾という晴香が癒されている男性のこと。


祐輝は、憲吾の存在を認めたわけではない。


人の妻を、家庭があるのを知っていて、その気にさせた…


でも、憲吾に癒されている晴香の顔を見た時に、自分にはあまりしたことのない穏やかな表情をしていたのに、驚いた。


きっとあれが本来の晴香の表情なのだろう。


自分が知らなかった…