祐輝は母親と帰って行った。


里美がキッチンに、泣きながら薬を用意しに行く。


呼吸が落ち着いて、顔色が戻りはじめた晴香は、切れた憲吾の唇のあたりを指で触れながら、泣いていた。


ごめんね…そう言いたいのに、苦しくて声にならない。


里美と母が持ってきた薬と水を、少しむせながら飲むと、思わず隣にいた憲吾の胸の中に晴香は顔をうずめた。


母と里美は、目配せをすると、その場を離れた。


父は受話器を手に取り電話をかけようとして、気がついたように、憲吾にスタンドを付ける合図をして、部屋のドアを閉めた。


多分心配している憲吾の両親への電話だろうが、晴香へ少しでも聞こえない配慮だった。

里美は母とキッチンで、やっと落ち着いてお茶を飲みながら話しをしていた。