憲吾の腕の中で目を閉じていると、憲吾の鼓動が晴香に伝わってくる…


ドクン…ドクン…


一人じゃないんだ…


祐輝には求めても拒絶されていて、こんなふうに鼓動を感じることさえなかった。


男女のつながりは、ただ体を求め合うばかりではなく、ただ一時のこのぬくもりに、女は癒される…


癒されて…触れられて…初めて一つになりたいと願う。


憲吾の胸の中にいて、腕の中に包まれていると、不安がなくなる。


祐輝には、こんなふうに晴香を癒してくれる気持ちは、結婚する前から一度もなかった…


きっと、祐輝に憲吾のような優しさが少しでも感じられたら、祐輝を愛せただろう…


愛しい世利の父親は祐輝なのだから…世利を授けてくれたのは、祐輝。


でも…愛し方を知らない、人を傷つけてばかりの祐輝を、もう愛してはいない…