「嫌だっていっても、このままじゃいけないよ。ただ…憲吾の存在だけは、絶対に今言ってはいけないよ。わかったかい…」


「うん…」


「憲吾に代わって…」


「はい、代わりました。晴香ママの声、受話器から聞こえてました」


「憲吾…とりあえず晴香と帰っておいで。今日は祐輝さんこないから、ご飯食べながら話ししよう…」


「はい…今帰ります」


晴香の顔から笑顔が消えていた。


「大丈夫だよ晴香!俺もいるし、パパママもついてるだろう。心配しない!ねっ」


「うん…」


「おいで、髪直してあげるから」


髪を直されても、服を着せてもらっても、晴香の心は現実に引き戻されて、笑顔になれなかった。


憲吾も、明るくふるまってはいたが、これからの現実に、晴香が一人で耐えられるか心配だった。