スパイシーな彼~あなたとの甘く優しい瞬間

最初で最後の寛之とのランチだと、美雪は思っていた。


寛之にそんな感情があったことを知ってしまうと、逆に一緒にいることは、祥子を裏切ってしまう…


そんな気持ちがしていたから…


「先輩、ごめんなさい。私用事思い出しちゃって…」


「俺は食べ終わるからいいけど、風間半分くらいしか食べてないよ~いいのか?」


「はい…もう、お腹いっぱいです」


胸がいっぱいで、喉に通らない…


本当の気持ち。


「じゃあ、会計するか~おごってやるから、金出すな~」


「え…あっ…はい。ごちそうさまでした」


店から出ると、寛之は


「じゃあ、俺祥子の見舞い行ってくるわ~風間気をつけてな」


「はい、ありがとうございました」


ぺこっと頭を下げた。その光景は、部活で先輩、後輩だったあの頃と、変わることなく、寛之に気持ちを伝えることなく、二人の最後の瞬間だった…