スピカ

 まただ。
また、楸さんと2人の空間。……あたしの苦手な。

「あんまり自分の事話さないよな」

急過ぎるその言葉に、疑問符が飛ぶ。
理解出来ないのは、あたしが話を聞いていなかったからじゃなくて、楸さんの話の振り方がおかしいからだと悟り、「誰が?」と眉を顰めた。

「雅ちゃん」

「……何が言いたいんですか?」

もっと話せ、って事なのだろうか。
確かに、あたしは感情表現が下手かもしれないけれど、どうして楸さんに自分の事を話さなくちゃならないんだ。

「別に。そう思っただけ」

「はぁ? 意味分かんないんだけど」

「意味なんてないよ」

それなら、そんな意味深な事を言わないでほしい。いくらあたしと言えど、悩んでしまうじゃないか。

「あー、下はあんなに賑やかだっていうのに、ここは長閑だねぇ」

左手に持つ煙草の煙が肺に入ってくる。どうして、わざわざあたしがいる方の手に持つのだろうか。
喫煙者よりも、受動喫煙者の方が害が大きいのに。もし肺ガンになったら、訴えてやる。
煙から身体を背け、あたしは小さく咳をした。

「ね、雅ちゃん」

「……何?」

「もし、」

深刻な声でそう言うもんだから、自然と視線が隣りへ動く。
楸さんはぽとりと地面に煙草を落とし、それを足で揉み消した。煙が途切れるのを、目で追う。
それを見ていたのか、楸さんの黒い瞳があたしに向けられていた。

唇が微かに動いたかと思うと、直ぐさま視線は遠くに離れた。ドアの開く音と、話し声が聞こえてきたからだ。


だけど、神様ってのは厭味な奴で。
どうして、治りかけの痂を捲ろうとするのだろう。


どうして。