スピカ

「ねえ、今は当番じゃないの?
 あ、それとも、これから?」

カタンと亞未が座っていた椅子を片手で引く。
いつもはスウェットかセンスの悪いジャージなのに、人目に晒されるからなのか、珍しく今日はきちんとした服を着ている。お洒落をすれば、まぁ、細身もスレンダーでかっこいい……の、かな。

「もう終わりましたよ」と出来る限り冷たく言い払うと、ニヤリと口元が緩んだ。

「誰待ち?」

何でそんな事聞くんだよ。
放っておいてくれればいいのに。

「……てか、場所変えません? ここ、一応控え室だから」

さっきから、クラスの女子がチラチラとこっちを見ていて、正直欝陶しい。楸さんの事が気になって仕方がない、って感じ。
こんなチャラ男のどこが良いのか、あたしには分からないけど。
何より、こんなにも見られると、さすがに話しづらいのだ。

座ろうとした楸さんの脇腹を押すと、「そっか」と間の抜けた返事が返ってきた。

席を立っただけで、複数の視線が飛んでくる。
そんなに気になるなら、大の女好きな楸さんに直接話し掛ければいい。後で「紹介してほしい」なんて言われるのは御免だ。

けれども、特に誰かが話し掛けてくる事もなく、気まずい沈黙の中、あたし達は教室を後にした。