ハニーブラウンの、甘い色の髪がさらさらと風に踊る。憎くて仕方がない陽の光でさえ、眩しく溶け込んでいく。

隙間から時々姿を現す白い肌が、透き通っていて美しい。綺麗なんかじゃない。美しいんだ、この人は。
同じ血が流れているとは思えない。

「歩くの、遅いよ」

透明な視線があたしを捉える。

――そのままあたしを浄化してくれたらいいのに。

なんて。無謀な事が頭を過ぎる。あまりの暑さに、頭をやられてしまったのかもしれない。
下らなさ過ぎて笑いが零れた。

「梢姉、速い」

そう言うと、梢姉も同じように笑いを零した。なのに、あたしとは気品とやらがどこか違う。

「あたし、せっかちだからね。暑いし、早く帰ろう」

少しだけ懐かしくなってしまった笑い方。
あたしが目だけで返事をすると、梢姉は再び斜め前を歩き始めた。

梢姉は、藤代家の長女だ。
……と言っても、今は一緒に住んでない。梢姉は昨年、お嫁に行ってしまったから。

妹のあたしから見ても、気立てが良くて美人な姉。梢姉をお嫁に貰えるなんて、直人さんも結構な幸せ者だ。