細い糸となって冷光が目に差し込む。それを阻む睫毛に光が反射してキラキラしている。

そうだ。あの煙草のパッケージにあった、文字の色に似ている。冷たくて、それでもって、少し優しい色。名前は確か……スピカ、だっけ。


言葉に出来ないような眩しい色彩が薄れ、埋め尽くされていた視界がだんだん開けてくる。淋しい光の奥は、木で出来たいつもの天井だった。

意識がはっきりしないまま、額に手を当てると、どこからか、ほんのり煙草の匂いが香ったような気がした。
窓の隙間から漏れ込んで来る光は、さっきとは違う。温かい、太陽の漏れ日だ。

のそのそと布団から這い出ると、身体が僅かにぎしりと痛んだ。

「あれ……?」

あたしは確か、外で楸さんを待っていたはずだ。あの後、どうなったんだっけ。記憶がはっきりしない。
眠くなって、寝ぼけながらも何とか帰ってきたのだろうか。だとしたら、あたしには夢遊病の気があるのかもしれない。
ぐちゃぐちゃの髪を引っ掻きながら、階段を下りた。