あれは、告白だった。
情景なんて思い出せないし、楸さんが言った言葉も脳内リピートを繰り返し過ぎて、不思議な言葉に聞こえてくる。

もういいって、どういう事? もう、あたしを好きじゃなくなったって事なのだろうか。

もしそうだとしたら、どうなるのだろう。

楸さんはあたしの前から消える? それとも、前みたいに話したり出来なくなる?

所詮そんなものなのか? あたしも、楸さんも。脆弱な糸で繋がっていただけなのだろうか。

あたしは、楸さんと洋君に、全く違う感情を抱いていたはずだ。じゃなきゃ、こんなに苦しいはずがないでしょう。

言葉を返せないまま、楸さんの背中は扉の中へ消えていってしまった。


引き止める事もない。そんな必要はないのだから。楸さんは、ただの住人。あと1年も経てば、いなくなってしまう。

元々いなくなる人に、期待なんて出来る訳がないのだ。


そんな薄弱な関係、いつか途切れてしまうのが、当たり前の事でしょう。
時間は、待ってはくれない。変わらないものなんてないって、教えてくれたのは楸さんじゃないか。

良くなる事があれば、壊れていくものだってある。それを引き止めようとするのは、狡い行為なのじゃないだろうか。

頭の中に浮かぶ理論は、どれも矛盾だらけで、真っ白なページを塗り潰していく。真っ黒に。


今はただ、逃げ出したい。

現実の出来事から。



楸さんの言葉から。