スピカ

「さては、また夜遊びしたんじゃ」

「ああ、もううるさい。何で朝っぱらからいるんですか」

「何でって……今日はクリスマスでしょうが! 本当に日本人かね、チミは」

うっるせー……
人が悩んでいるって言うのに、ズカズカ入り込んできて、本当に迷惑な話だ。大体、クリスマスは日本の行事じゃないし。
それに、どうして楸さんがクリスマスに家にいるんだよ。もっと他に行く所が……

「楸サンタからプレゼントだよーん」

「え、」

ほい、と言って渡されたものは、

「クマ?」

「こらこら。テディベアと言いなさい。テディベアと」

ふわふわのテディベア。楸さんは軽々と手だけで持ち上げていたのに、あたしの腕にはいっぱいの大きさ。
大きけりゃいいってもんじゃない。全く、洋君とは正反対だな。

「雅ちゃんにはテディベア、蛍ちゃんには香水、満希さんとおじさんにはワイン」

「あたしだけ子供扱いかよ。……てか、お返しとか用意してないんだけど」

「別にぃ。雅ちゃんは、大きい物じゃないと忘れそうだもん、俺の事」

「え?」と言うと、楸さんは何やら含み笑いをした。
蛍姉は香水の箱を横に、新聞の広告を見ている。蛍姉の次は、あたしがターゲットって訳か。

「俺がいなくなっても、皆が俺の事を忘れないように」

「何言ってるんですか。まだ1年いるくせに」

まぁね、と、涼しい顔で蛍姉の向かいに座った。まるで我が家のように寛ぎやがる。こんな光景を見慣れてしまった自分にも、呆れてしまった。

「プレゼントじゃなくて、家賃払って下さいよ」

「え? いやっ、あの……プレゼントで先月分はご勘弁を……」

「するか、馬鹿! それとこれとは別だっつーの」

「満希さぁん……」

猫撫で声を出すと、楸さんはご機嫌なお母さんに、潤んだ目を向けた。
これがコイツの作戦だ。生意気な。

「もう、楸君ったら……仕方ないわねぇ」

「お母さんっ!」