「……はぁ。てかさ、女連れ込むのは楸さんの勝手だけど、爆音で音楽かけるのは止めてよね。あたし、テスト中だから」

「え?」

「どうでもいいけど、うちのアパートは壁薄いから、他の場所に行った方がいいと思うよ」

「な、」

イライラしながら制服の上着をハンガーに掛ける。部屋着は生憎、ベッドの上に置かれていた。

「楸さん、そこの、」

「……本気?」

「は?」

「どうでもいい、って……本気で言ってんの?」

本気で言ってんの?って言われても、答えに困ってしまう。本気も何も、どうして、そんな事に食いついたのかが分からない。大して意味はないのだから。

「本気っていうか、本当の事じゃん。あたしには関係ないし」

楸さんの眉がぴくりと動いた。
やばい、かも。何か気に触る事でも言ってしまったのだろうか。
口を噤み、あたしは楸さんに背を向けた。怒ったのなら、勝手に部屋から出ていくだろう。

だけど、楸さんは動かずに、何かぼそりと呟いた。

「……き……ち……よ、ばかやろう」

………。

「気持ち悪ぃんだよ、ばかやろう? 何だとてめぇぇっ!」

「、へっ? 俺、そんな事言ってな」

「そう聞こえたんだよ、このボケェェー!
 殺す、ぶっ殺す!」

「ちっ、ちが! 違うって!」

さっきまで不服そうだった楸さんの眼が、恐怖で脅えきっている。
それもそうだ。気持ち悪いと言われて喜ぶほど、あたしはマゾヒストじゃない。

「さっさと、出ていけぇぇーっ!」