スピカ

 遠くで固い音がする。
金属を打つような、そんな音。
耳に慣れたそれが、どこから響いてくるのかは目を開かなくとも分かる。ここで18年間も過ごしてきたのだから。

いつの時代も、同じリズムがここに響いてくる。つまりは、何年経とうが、ここに住む学生達の足取りは同じだという事。
下りる時は早いくせに、上りはいつも怠そうに階段を鳴らしていく。

目を開いていないのに、赤みが瞼に映る。自然と動いた眉が、頭に痛みを走らせた。

「、……」

視界をぼんやりさせる間もなく、飛び込んで来た物凄い光に、再び目を瞑る。
顔を背けると、瞼に映る光は次第になくなっていったものの、意識は急に目を覚ました。
近くで、小さな寝息が聞こえる。

恐る恐る睫毛を上げてみると、目の前にあるではないか。楸さんの寝顔が。

ぎょっとしたまま、硬直した身体は動く事が出来ない。同じベッドで、あの男が寝ている。寝起きにこんな事実、正直きついでしょう。

あたしは、慌てて自分の体を見た。