もう、声にならない。吐息だけが耳の奥に響いて、胸が握り潰されてしまいそう。呼吸もままならない身体が、熱くて熱くて仕方がない。
小さい子みたいに泣きじゃくるあたしを、優しく撫でるのは大嫌いな男の手で、それなのに、それを拒む事すら忘れてしがみつく。
支えられる事が嫌いだった。同情されているみたいで。可哀相だと思われるのが何よりも嫌で。
けど、理性が飛んだあたしにはそんな美学さえも貫き通せない。その手に騙されていたんだ、きっと。匂いさえも錯覚させる。
そんな狡い楸さんが、今は必要だった。
「あた、し……っ、素直じゃ、なかっ……た」
言葉が成り立たない。でも、どっちだっていい。聞き取ってくれなくたって。
自分自身に対する戒めの言葉だから。
今更、遅かったんだ。好きだったって気づいても、もう終わってしまったのだから。
自分がこんなにも未練がましい女だったなんて、今、初めて知った。
醜い自分が苦しいくらいにもどかしい。
「……うん」
“もっと素直に生きなさいよ”
素直じゃ、なかった。全然。
楸さんがあの時、どんな気持ちであの言葉を言ったのかは分からない。深い意味なんてなかったのかもしれない。
だけど、あの言葉が今は物凄く身に染みている。
どうして、引き止めなかったのだろう。
本当は別れたくなかった。もっともっと、良平を好きでいたかった。好きだ、って、一言も伝えずに終わりたくなかった。
素直に、なりたかった……
「っ、最低だ、あたしっ……」
掌に食い込んだ爪が痛い。
息が詰まっては、過剰な酸素が肺に侵入していく。苦しくなんかない。圧迫を止めない胸に比べれば。
「今日、やっぱり来て良かった」
静かな声がそう呟いた。汗ばんだ額に、直に吐息が届く。
返事なんて出来ない。詰まった言葉からは鳴咽しか漏れないのだから。
楸さんは唇を揺らし、震えの止まらない肩を更にしっかりと包み込む。抱き締める腕が優しくて、それなのに強くて。涙が溢れた。
「1人で泣かせるところだった」
ぎゅっと瞑った目から、次第に色が掻き消えていく。涙に混ざって、吐息からは、ほんのり苦い匂いが香った。
小さい子みたいに泣きじゃくるあたしを、優しく撫でるのは大嫌いな男の手で、それなのに、それを拒む事すら忘れてしがみつく。
支えられる事が嫌いだった。同情されているみたいで。可哀相だと思われるのが何よりも嫌で。
けど、理性が飛んだあたしにはそんな美学さえも貫き通せない。その手に騙されていたんだ、きっと。匂いさえも錯覚させる。
そんな狡い楸さんが、今は必要だった。
「あた、し……っ、素直じゃ、なかっ……た」
言葉が成り立たない。でも、どっちだっていい。聞き取ってくれなくたって。
自分自身に対する戒めの言葉だから。
今更、遅かったんだ。好きだったって気づいても、もう終わってしまったのだから。
自分がこんなにも未練がましい女だったなんて、今、初めて知った。
醜い自分が苦しいくらいにもどかしい。
「……うん」
“もっと素直に生きなさいよ”
素直じゃ、なかった。全然。
楸さんがあの時、どんな気持ちであの言葉を言ったのかは分からない。深い意味なんてなかったのかもしれない。
だけど、あの言葉が今は物凄く身に染みている。
どうして、引き止めなかったのだろう。
本当は別れたくなかった。もっともっと、良平を好きでいたかった。好きだ、って、一言も伝えずに終わりたくなかった。
素直に、なりたかった……
「っ、最低だ、あたしっ……」
掌に食い込んだ爪が痛い。
息が詰まっては、過剰な酸素が肺に侵入していく。苦しくなんかない。圧迫を止めない胸に比べれば。
「今日、やっぱり来て良かった」
静かな声がそう呟いた。汗ばんだ額に、直に吐息が届く。
返事なんて出来ない。詰まった言葉からは鳴咽しか漏れないのだから。
楸さんは唇を揺らし、震えの止まらない肩を更にしっかりと包み込む。抱き締める腕が優しくて、それなのに強くて。涙が溢れた。
「1人で泣かせるところだった」
ぎゅっと瞑った目から、次第に色が掻き消えていく。涙に混ざって、吐息からは、ほんのり苦い匂いが香った。


