私の一日は、目の前で眠る彼の寝顔を眺めることから始まる。


窓の外から射しこむ柔らかい太陽の光が、彼の色素の薄い髪や長いまつげに反射して、キラキラと輝く。


電車の外の景色に目を移すと、木々の葉が紅く色づきはじめていた。


私が毎朝電車に乗る時間帯は、通勤通学ラッシュのピークにぶつかるので、座れたりはしないけど、

ぎゅうぎゅうと押しつぶされて身動きが取れなくなるような、そんなひどい混み方はしていない。


むしろ、彼を眺めるのにちょうどいい混み具合だったりする。

私と彼の周囲に適度に人がいて、電車の中の風景に埋もれる感じ。


そのお陰で、ほんの二十分間だけど、私は幸せな気持ちで、心置きなく彼の寝顔を眺めることができるんだ。