「周ちゃんっ」
 
話し終わったらしく
その男が店を出ると
ドアのところに突っ立っていた俺に気づいて
いつものように俺の名前を呼んだ。
 
 
あんなに望んだことなのに
 
自分のばからしさに嫌気がさす。
 
 
―そんなふうに
他の男の名前を呼ぶの?
 
 
 
「おう」
 
胸いっぱいに広がった嫉妬を押し隠して
笑顔で手を上げる。
 
 
「今の男誰?」って
普通に聞けたらどんなに楽だろう。
 
・・・そんなこと
絶対聞けない。
 
 
俺は美桜の
彼氏じゃないから。
 
 
 
「今日・・・
いきなり誘っちゃって
ごめんね?」
 
 
そう言って
申し訳なさそいに笑う美桜を見てると
どうしようもなく
いとしくなった。
 
 
―美桜が俺だけのものなら
どんなに幸せだろう。
 
そんなの
想像もつかないよ。