「…って、いけない。もうこんな時間じゃない。私帰らなきゃ」


いつの間にか暗くなっていた空を見て、ケータイで時間を見た先輩が慌てだす。



「先輩、この後用事でも?」


「エステに行かなきゃいけないのよ。この見た目を維持するのも大変ってことね」



エステ…。


私には縁のない話だな…。



どこか輝いて見える宮崎先輩を見つめていると、先輩は少し照れたように、視線を泳がした。


「えっと…ハンカチ、洗って返すから。ありがとね」


「え…いや、そんなお気遣いなく…」


「いーから!私が嫌なのよ」



頑なに譲ろうとしない宮崎先輩に、「それじゃあ、お願いします」と渋々と引き下がる。



そしてそのままの流れで、もう教室に鞄を取りに行こうかと思い、「それじゃ…」と頭を下げかけると、

またもや、先輩が、「あっ」と思い出したように声を上げた。