二人ともお互いを見つめていて、

きっと、私のことは視界に入ってないだろう。


「………」



あぁ…また鼻の奥、ツンってする。


目の前がちょっとだけ滲む。



(ここにいちゃ、ダメだ)



「…帰りますね」



ただ小さく、それだけを呟く。

そしてそのまま一気に走った。



一瞬遅れて、夏輝先輩が「あっ…」と声を漏らしたのが聞こえた。



昨日とほとんど同じパターン。


でも、今日は昨日よりひどい。


(…あの人が、先輩の好きな人……)



ドクン、ドクンと、苦しいほどに鳴り響く胸を抑えながら、


私は後ろを見ずに、家まで走り続けた。