「あぁ、それと」


先輩は特に気にする様子もなく私の膝へと視線を移した。


「その猫、うちの飼い猫なんだよね。」



……………は?



先輩はポカーンとする私を見ると、クスッと笑ってから目の前でしゃがみこんだ。


「おい、しずく。家抜け出してきたらダメだろー」



すると、“しずく”に反応してか、今まで寝ていたネコちゃんがピクン、と起き上がった。


「あっ……」


しずくちゃんは私をチラッと見るとそのまま膝から軽やかに飛び降り、先輩を一度も見ることなくフェンスをくぐり抜けていった。