きみ、ふわり。



「そんな噂、聞いたことねぇわ。
 てめ、妄想も大概にしとけよ。
 お前は夢見る乙女か!
 くだらねぇわ、まじで」

 笑い過ぎて息まで切らしている悠斗に、「だよなぁ」と同調してやると、再びブッと勢い良く吹き出した。


「何、お前? あっさり認めちゃうの?
 だったら最初からアホな妄想ぶっこくなって。
 やべ、笑い過ぎてチビりそう。
 シッコ行って来るわ」

 ガタリと椅子を鳴らして立ち上がった悠斗は、突然ピタリと押し黙っていつもの無表情に戻り、俺に一瞥を寄越す。

 そうして、クルリと踵を返し俺に背を向け教室出口へ向かうが、またプッと小さく吹き出し、

「ほんと、瀬那ってオモロイ」

 しみじみと呟きながら教室を出て行った。