きみ、ふわり。



 紗恵の身体は悦んで俺を受け入れているくせに。
 俺の抱擁にすっかり委ねきっているくせに。

 それでもまだ、紗恵はそんな言葉を吐く。

 意地を張っている風でもないから、益々紗恵の気持ちがわからなくなる。



「いつまでも『みんなの瀬那くん』でいろって?
 それ、酷(コク)じゃね?
 俺、ジジイんなったら独りぼっちじゃん」

 冗談ぽく返して流そうとしたけど、紗恵はブンブンと首を激しく横に振る。

「違います。
 先輩は、いつか本当に好きな人と結ばれます。
 だから独りぼっちなんかにはならないです。
 でもそれは私じゃない、私じゃ駄目なんです」


 お手上げだ、と思った。
 頭の中は大混乱だ。

 頭痛すらする、もう考えるのはよそう、身体に良くない。