きみ、ふわり。



「せん……ぱい……」

 紗恵が吐息のようにこぼして、ほんの少しだけ顔を上げた。


 腕を緩め、肩に掛かる真っ直ぐな黒髪を右手で右肩へと流した。
 そうして顕わになった左首筋をゆっくり、味わうように唇でなぞった。


「あっ」

 と。
 紗恵が短い声を漏らし、それが堪らなくエロチックに二人を包んでいる空気を震わす。


 こんな行為でさえ、とても艶めかしくて官能的だ。
 俺の性欲は十二分に満たされているから、今はそれ以上を望むべきではないと思う。
 勿体ないだろ、実際。

 下半身については、独立した意志を持った俺とは別の生き物だと考える。
 反乱軍だ。
 対する俺は、レジスタンス。



「先輩は私のことを好きになったら駄目です」