けど――
どうして俺の気持ちが紗恵に届かないのか。
どうして俺の言葉に対しては、何も答えてくれないのか。
何故こうも話が噛み合わないのか不思議で仕方がない。
なんとなく。
核心には敢えて触れないように、話を逸らしている気がする。
その『核心』自体、何なのか俺にはさっぱりわからないのだけど。
「『苦しい』とか、意味わかんねぇ。
俺なんか、もう紗恵にどっぷり嵌まってる。
紗恵も、もっと俺のこと好きになればいい。
俺に嵌まって、嵌まりこんで、抜け出せなくなればいい」
陳腐な愛の言葉に自分自身呆れた。
けどよくよく考えてみたら、俺は恋愛初心者だ、仕方ない。
ぎゅうと更に両腕に力を込めて、紗恵にしがみ付いた。
離したくないし、離せない、離れたくない。
このまま二人、溶け合って一つになってしまえばいい。



