紗恵は意外にもすぐに戻って来た。

 もう少し手こずるかと思っていたから、若干拍子抜けだったけど、処女を好んで食っているような卑劣な変態野郎と滞りなく縁を切れて何より。


「断ってきました」

 と、屈託なく笑う紗恵を見て、きっと今、紗恵の貞操が守られて安堵しているのは、むしろ俺の方だと思った。



 何となく……
 本当に何となく、理由もなく。
 ラブホで事を済ませることにどうしても抵抗があった。

 紗恵と一緒に居て、『ヤルだけ』なんて勿体ない気がした。


「俺んちでい?」

 指を絡め取って手を繋ぎ、隣の紗恵を見下ろして問えば、「はい」とまた元気良く答える。

 これからする行為のことを考えたら、この無邪気さはちょっと支障になるかなとほんの少し気持ちが沈んだ。