きみ、ふわり。



「ごめん、いい。
 わかってるから」

 慌てて取り消したけど、もちろん『時、既に遅し』だ。
 一度口から出た言葉は当然のごとく回収不能。

 紗恵をまた深く傷つけた。

 穢れのない綺麗な心に俺が鋭利な刃物を突き立てた。
 もうホント俺って最低。


 ポロポロと頬を伝って落ちる雫が俺を責めているように感じるのは罪悪感からだろうか。

 紗恵の瞳はどこか温かくて優しくて、ただ哀しげで。
 怒りや不満のような攻撃性は微塵もない。


 どうしたらいいかわからなくなる。

 この目の前の透き通るほどに一点の濁りもない少女は、どうすれば泣きやむのだろう。
 笑ってくれるのだろう。

 俺に彼女を笑わすことなんてできるのか?
 幸福(シアワセ)にできるのか?


 ……って。
 どこまで飛躍するんだ? 俺の思考。