きみ、ふわり。



「はぁ……どうぞ。
 “俺たち”、特に急いでませんから」

 ゆったりと、何でもないことのように答えた高見沢の、余裕綽々とした態度が何だか無性に面白くなくて、イラッときた。

 けどそれ以上に、『俺たち』という言葉に妙に引っ掛かって、ヤツの顔を思い切り殴り飛ばしてやりたい衝動に駆られる。



 紗恵のことになると、異常なほどに反応してしまう自分に呆れる。
 全神経が剥き出しになっているんじゃないかと疑うほどの敏感さだ。


 無情に突き放したのは俺だ。
 それなのに、紗恵の気持ちが他の誰かへと向くことが、どうしても許せない。

 腹立たしい。


 俺は、我儘だ。
 このモヤモヤした気持ちは我儘で一方的な独占欲だ。