きみ、ふわり。



「おいで」

 言いながら身体を端に寄せて、紗恵用のスペースを空けた。
 ゆったりとした動きで、紗恵が俺のすぐ隣に横になる。

 ドクン――
 心臓が跳ねたのは、これからする行為への期待が膨らんだからだ。

 それ以外には考えられない。


 そのまま抱き寄せたら、腕の中の紗恵は小さく震えていた。

 プルンとした艶やかな甘いピンクの唇に、俺のそれをそっと重ねた。


 けれど、何故だか心地が良くない。

 少しだけ隙間を空け、落とした瞼を上げてみれば――
 目を固く閉じ、口は口で真一文字にキツく結んだ紗恵が居た。



 もっと早くに気づくべきだった。
 浮かれ過ぎていて、その辺は全くノーマークだった。

 冷静な俺だったら、絶対に一目見た時点で察したはずなのに。