きみ、ふわり。



 みっちゃんはもう一度、わざとらしいぐらいに大きな溜息を吐くと、チラと壁掛け時計に視線をやった。

「ああ、もう。
 始業式始まっちゃってるわ。
 また教頭に嫌味言われる」

 俺に当て付ける様にブツブツ言いながら、そそくさと保健室を出て行った。


 途端、どっと疲れが押し寄せる。

 二人きりになるのに、こんなにも悪戦苦闘するぐらいなら、このまま学校を出てラブホでも行けば良かった。
 チクチクと日頃の素行の悪さを突かれ、かなり嫌な思いもしたし。

 それらを回避できたのだとしたら、ホテル代なんて安いもんだ。


 それにしても、みっちゃん。
 紗恵のことを特別扱いしている?
 というか、紗恵に甘い?

 紗恵が『うん』と言えば、エニシングOK……ってか?
 どうも腑に落ちない。