きみ、ふわり。



「そういうとこも、やっぱり変わってない」

「いい意味で?」

「悪い意味で」

 栗重は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
 きっとさっきの仕返しだ、その攻撃力は弱小だけどね。



「ねぇ先生。
 この子、未だに嫁の貰い手いないんだよ、先生、貰ってやってよ?」

 俺たちのやり取りをずっと黙って聞いていた“とよちゃん”が唐突に口を挟む。


 患者さんにこういうことを言われるのは良くあることだ、慣れている。

「うん、そうだね、考えときます」

 いつもの様にサラリと流したけれど、栗重の方はどうやら本気にしたみたいで、

「やめてよ、お婆ちゃん!」

 顔をカッと紅潮させ、焦燥しきったように言う。