「じゃあ、どこが悪いの?
言ってごらんなさい」
立ち上がって腕組みしながら、みっちゃんは責めるような目で俺を見る。
「優しくないね、みっちゃん」
不満げに呟いてから苦笑した。
そして、ベッドは諦めて他を当たるか、と踵を返す。
俺が歩き出すと背後のみっちゃんが、
「中留(ナカドメ)さん?
どうしたの? 体調悪いの?」
さっきとはまるで別人のような優しい声で、俺の一歩後ろに立っていた紗恵に声を掛けた。
『中留さん』とは多分、紗恵のことだ。
俺が引き返そうと移動したことによって、ようやくみっちゃんの視界に入ったらしい。
なぜみっちゃんが紗恵のことを知っているのか、ほんの少し疑問に思った。



