きみ、ふわり。



「不幸だなんて思わないよ。
 瀬那くんは幸せ者だよ、紗恵ちゃんにあんなにも想われて。
 紗恵ちゃんも、幸せだった。
 でもそれは、予定外で……」

 栗重の顔はもうグシャグシャで。
 見ているこっちが辛くなるほどで。

 心が痛い、どうしようもなくズキズキする。


「紗恵ちゃんは瀬那くんの容姿に惹かれて、ただ、瀬那くんに抱かれたいって思った。
 それ以上は何も望んでなかった。
 瀬那くんに愛されたいとか、そんなこと少しも考えてなかった。
 瀬那くんに、こんなにも辛い想いをさせるなんて、私たちは想像すらしてなかった。
 だって瀬那くんは……」

 そこまで言って、栗重は困ったような苦笑を浮かべる。


「来る者拒まず、決して誰も愛さない」

 俺が続きを自ら口にし、その自身の言葉に苦笑する。