きみ、ふわり。



「俺だって……
 俺だって幸せだった。
 紗恵が傍にいるだけで。
 紗恵以外何も要らなかった。

 その幸せを失った俺は――
 やっぱ不幸か」

 ようやく自覚した俺は、急に全身に気怠さを感じて、肩を落として俯いた。


 栗重の片想いは第三者から見たら絶対に報われないものだ。

 けれど、世の中何が起こるかわからないから。

 悠斗が生きている限り、チャンスがある。
 ペラッペラに薄いけど、望みがある。

 俺には何もない、チャンスも希望も……
 紗恵はもう居ないのだから。


 可哀想なのは、やっぱり俺だ。
 報われない恋をしているのは栗重ではなく俺の方だ。