きみ、ふわり。



「田所悠斗。
 悠斗くんが好き」

 どうでもいいって言ったのに。
 栗重は痛みを感じるほどの熱い視線を俺に向けて、はっきりとそう言った。


「へぇ」

 思わず頬が緩んだ。

 栗重が悠斗のことを好きとか、ウケる。


「やっぱお前、可哀想じゃん。
 あいつ、彼女以外全く興味ねぇもんな。
 多分お前なんか、悠斗の視界の端っこにも入ってねぇよ」

 酷いことを言っている自覚は、心のどこかにきっとあった。

 けど――
 俺より栗重の方が可哀想だと。
 俺は可哀想じゃないんだと。
 どうしてもそう思いたかった。


「それでも私は幸せだよ」

 そう言って栗重は、
 びっくりするぐらい綺麗な顔で笑った。

 その右目からつぅーと一筋涙が伝う。