きみ、ふわり。



「そんなこと言わないでよ。
 瀬那くんがそんな……
 瀬那くんは紗恵ちゃんの全てだった、それ読んだらわかるよ。
 紗恵ちゃんは瀬那くんと出会って、『生まれてきて本当に良かった』って言った。
 短かったけど、その分、他の誰よりも幸せな時を過ごしたって。
 瀬那くんに出会う為に生まれて来たんだって。

 紗恵ちゃんの生きた証を――
 否定しないで」

 一気に吐き出して、栗重はキュッと唇をきつく結んだ。
 その両目からは涙がボロボロとだだ漏れで。

 でももう何だか……
 栗重の泣き顔にも見慣れてしまった。

 というか。
 栗重が泣いているのは当たり前で。
 大切な後輩が死んだんだ、極自然で正常な激情だ。


 逆に、俺が泣けないことが不思議で仕方なかった。

 哀しいはずなのに。
 辛いはずなのに。