きみ、ふわり。



「んな訳ねぇだろ?
 知らなかったら、俺にとってはただの失恋で終わったんだ。
 紗恵が死んだなんて。
 紗恵はもうどこにも居ないなんて。

 紗恵は――

 死んだのか……」

 俺の脳がようやく事実を受け入れたら、逆に頭の中が混乱してショート起こして真っ白になった。


 栗重の「うん」という肯定が、やけにはっきり耳に届く。



 瞼を持ち上げていることすらしんどくなってきて目を伏せた。


「好きになんなきゃ良かった」

 思わず、そんな言葉が口から落ちた。


 途端、ガタッと椅子が鳴ったと思ったら、栗重に胸倉を掴まれた。