きみ、ふわり。



「うん、中学の友達と」

 言って背後を振り返り、店の角の席を指で差す。

「ほら、あそこ。
 携帯弄ってる茶髪の子」

 言われて俺もそちらに視線をやった。


 あれ、茶色なのか?
 どっちかって言うと黄色に近いのでは?

 左手には確かに携帯、退屈そうにそれを眺めている。
 そして折った右腕の肘をテーブルの上につき、その先端にはモヤモヤと白い煙を立ち上らせているタバコ。

 あれが栗重の友達とか、意外過ぎてとても信じられない。
 俺の脳ミソがその情報を受け付けない感じ。


 栗重は肩に掛かるぐらいのストレートの黒髪、サイドの髪を頭頂部で纏め、団子みたいにしてのっけてある。
 化粧も一切しないし、おまけに地味な茶色いフレームのメガネをいつもどんな時もかけている。

 真面目女子の典型だ。