きみ、ふわり。



「ガムシロだけちょうだい」

 俺がそう言うと、栗重は自分のグラスをすぐ横の台の上にわざわざ置いて、ガムシロップを一つ取り、ご丁寧にその蓋を開けて俺が持っているグラスに入れてくれた。

「どうも」

 何だか妙に照れくさくてボソリと礼を言い、グラスを軽く揺すり中の液体をクルクル回した。

 アイスコーヒが少し跳ねてグラスの外に滴った。
 それがグラスを持っている手に付着、チッと舌を鳴らすと、

「やっぱストローいるじゃん」

 栗重は可笑しそうに笑って、再びストローを一本手に取った。

 封を開けて取り出したそれを俺のアイスコーヒーにブッ挿して、クルクルかき混ぜるとドリンクコーナーに設置してあるゴミ箱に躊躇うことなく捨てた。


「勿体ねぇ」

「こぼしたコーヒーだって勿体ないでしょ」

 確かに……