きみ、ふわり。



 両親は出かけていて夕方まで戻らないからと、誘われるまま紗恵の自宅へやって来た。

 紗恵には姉が一人いるが、結婚して東北か北海道か、どこか北の方に今は住んでいると言っていたような気がする。



 部屋は極シンプルで、最低限必要な物しか無いという印象。

 隅に置かれた3つのダンボール箱が目に留まり、ああ、引っ越しの準備か、と納得してチクリと胸が痛む。

 未練タラタラ、往生際の悪い自分に自己嫌悪、更に気分が落ちた。



 紗恵のしっとりした肌が俺のそれと重なり、溶け込むように纏わりつく感じが堪らなく好きだ。
 最中の切なげな表情も、遠慮がちに漏らす吐息も、俺を受け入れ悦びに震える秘部も全部。

 紗恵の全てが――
 俺は好きだ。


 それが明日には過去形になってしまうと思うと苦しくなった。
 いつも以上に息が上がっているのは、きっとそのせいだ。