きみ、ふわり。



 俺を振り返って見上げた紗恵はプウと膨れていて、こんな子どもの遊びにムキになって、と何だか無性に笑えてきた。


「ちっさくしたらいんじゃね?
 摩擦の抵抗少なくなるし」

 言いながら、3分の1ぐらいを切り取ってサイズを少し小さくした。
 紗恵は「さすが理系!」とキラキラ瞳を輝かせ、感嘆の声を上げた。

「いや、理系とか関係なくね?」

 一応そのマジボケにきちんと突っ込みを入れて、けれど俺もつられて笑った。



「ちょっ、キツっ。
 俺の尻(ケツ)はみでるわ」

 俺たち二人分の尻の面積は、小さくなったソリの許容範囲を超えてしまった。

「交代にすっか。紗恵、先、お前行け」

 言って立ち上がれば「えー」と不満げな声を上げて俺を見上げる。
 くしゃりとその頭を撫でてやると、紗恵は口は尖らせたまま、照れたような笑みを浮かべた。