きみ、ふわり。



 言いたいことはもっと他にもあった。
 けれど口にできたのはたったそれだけだった。



 見っとも無く喚き散らして、女々しく縋りついて、それで紗恵の気持ちが繋ぎ止められるなら迷わずそうしたさ。
 けどそれは不可能だということに気付いていた。

 酷く曖昧で根拠も何もなかったけど、何故か強く確信していて。


 だとしたら、取り乱して最悪な印象だけが残るよりは、潔く引き下がったスマートな俺だけを紗恵の中に残したかった。

 だから俺は、バカみたいに格好つけて――


 愛の言葉だけを紗恵に伝えた。