「そうじゃないです。
私が遠距離は嫌なんです。
きっと寂しくなる。毎日泣いてしまう。
だから、向こうへ行ったら新しい恋がしたいです。
凄く我儘だってわかってます。
自分勝手で自己中で我儘なんです、私。
先輩にそんな風に想って貰う価値なんか、全然ないんです。
だから私のことは忘れてください。
私も、きっとすぐ、先輩のことは忘れてしまうと思います」
紗恵は残酷な言葉をスラスラと口から出して、その後、ニッコリ微笑んだ。
でもご都合主義な俺にはそれが、泣いているように見えた。
紗恵は嘘を吐いていると思った、そう思いたかった。
紗恵の笑顔を見詰め返すことが苦痛になって耐え切れなくなって。
その頭に手を添えて、自分の胸に紗恵の顔をそっと押し付けて隠した。
「酷ぇな、紗恵。
でも、そんなお前も……
悔しいけど、凄く愛しいよ。
愛してる」



