きみ、ふわり。



「もう眠くないです」

 ほんの少し口を尖らせて紗恵が言う。
 何故拗ねているのかさっぱりわからないけど、

「うん、わかった。
 じゃあ眠らずにこうしてよ」

 言いながらギュウと強く抱きしめて身体を密着させた。


 けれどまだ足りない。

 俺と紗恵の間の隙間が無くなればいいと思う。
 その為には身体の凹凸でさえも邪魔だった。

 幸いなことに紗恵の凸は小さい、たったそれだけのことが嬉しくて仕方がなかった。


 それでもやっぱり眠いのか、紗恵は俺の胸に顔を押しつけて目をゴシゴシ擦る。
 俺がきつく抱き締めているせいで、手の自由が利かないからだ。



「やっぱ眠いんだろ?
 我慢すんなって」

 子どもみたいな仕草が可笑しくて、笑い混じりに言えば、ゆっくりと俺を見上げた。
 トロリと溶けてしまいそうな虚ろな眼差しに、一層笑いが込み上げる。