「もしもーし。せなっち?
あのさ、あと1時間ぐらい遅くなりそう。
だからごゆっくりぃー。
ねねね、こないだの子、また来てんでしょ?」
受話器越しに大声をマシンガンのように大連射され、思わず耳を離して眉を寄せた。
無遠慮な質問には一切答えず「わかった」とだけ答えると、
「ひゅうー、絶賛反抗期ちゅうー」
と面白がって冷やかしやがったので、迷わずブチリと電話を切った。
まだ寝ぼけているようなポケッとした顔の、視線も覚束ない紗恵に、「おはよう」と触れるだけのキスをした。
紗恵は照れ臭そうにくしゃりと笑い、「おはようございます」と丁寧な挨拶を返して来た。
つられて俺の頬も緩む。
「あの人、あと1時間は帰って来ないって。
もう少し寝れる」
言いながら目の前の細い身体を両腕で包み込み、ベッドの上に紗恵ごと再び転がった。



