きみ、ふわり。



 決して華やかではないけれど、控え目で密やな美しさが尚更愛しかった。



「しんどくなったらすぐ言って」

 紗恵がコクリとまた小さく頷くのを確認し、俺はゆっくり動き始める。


 大切な物を壊しているような罪悪感が、胸の奥から込み上げてきて泣きたくなった。

 けれどそれはすぐ、
 果てなく押し寄せる快楽に呑み込まれて消えた。



 事終えても、紗恵を背後から抱きしめ、ベッドの上に横たわったままでいた。


 紗恵は疲れて眠ってしまったらしく、スゥ、スゥ、と規則的な呼吸音が静けさの中やけに響く。

 俺もこのまま眠ってしまいたかったけれど、ここは親父の部屋だ。
 もう30分もしたら、女と琉佳も帰って来る。


 自分の部屋でしたら良かったと、今頃になって激しく後悔した。