君が好きにならなくても




………私のだ。



落としていることにさえも気づいてなかった私は、生徒手帳を鞄の下の方に入れた。




「………ありがとね。落としてることに全然気付かなかった…」

「中庭のベンチのところに落ちてたのを拾っただけだから」



前の黒板を見たままそう言ったキャラメルブラウン。



………中庭。



そうだ、今朝。中庭のベンチに座って大きな桜の木を見た時だ。その時、落としたんだ…。



もしかしたら、いい人かも知れない。